東京高等裁判所 昭和31年(う)3088号 判決
被告人 清水敏男
〔抄 録〕
弁護人の控訴趣意第一点について。
強盗罪の構成要件である暴行又は脅迫は相手方の身体又は意思を制圧してその反抗を抑圧するに足る程度のものであることを要することは所論のとおりである。しかし原判決の引用する証拠によれば、被告人及び原審相被告人宮本光一、同鯨井泰雄等は保坂勝三と共に昭和三一年九月一日午前一時三〇分頃埼玉県北足立郡鳩ケ谷町大字三和三〇三一番地先路上において自動車運転者である三浦貞志をその運転する自動車から下車させ、被告人において右自動車のスウィッチの鍵を取り外して所持した上、被告人等四名は右三浦貞志を取り囲み、交々同人の顏面を手拳で殴打し、或は同人の脛又は股の辺を足蹴りにする等の暴行を加え「金を持つているだろう千円あつたらよこせ、金を持つていない筈はないだろう、金を出さなければこの儘では済まされねえぞ」等と申し向け更に危害を加えるような気勢をなしたので三浦貞志は深夜人通りのない場所であり、救出を求める方法もなく、只生きて帰途に就くことを願うのみの状況であつたことを認めることができるのであるから、被告人等の三浦貞志に加えた暴行、脅迫は同人の反抗を抑圧する程度に達していたものといわねばならない。所論の原審証人三浦貞志の原審公判廷における供述は、原裁判所が原判決引用の証拠に徴し措信し難いものとして事実認定の証拠に引用しなかつたものであり、その他記録を精査検討しても原判決の強盗の認定が所論のように誤認であつて、被告人等は単に三浦貞志を恐喝したに過ぎないものとは認められない。しからば原判決の事実誤認を主張する論旨は理由がない。
(加納 吉田作 山岸)